ロコイズム

時の流れを"加工"で体現

アメリカ関税の法律では製造されてから30~99年経過しているものを『ヴィンテージ』としているようだが、ことファッションに関しては1960年代後半もしくは70年代前半までのものと認識している諸兄が多いのではないだろうか。

半世紀以上前に生まれ、時代の荒波を乗り越えてきた佇まいを、もし加工で完璧に再現できたとしたら、きっと世界中のファッションフリークが諸手を挙げて喜ぶだろう。

そして、、、
それを実現しているブランドがすでにここ日本に存在しているのだ。

そう、ご存知【REMI RELIEF】だ。

今回は、REMI RELIEFの中でも屈指の人気を誇るスペシャル加工のスウェットについて改めて解説しよう。
古着のあの絶妙な色の正体をデザイナー・後藤豊さんの推理・仮説を元に語ることとする。

まずは古着が褪色する原理に対する考察だ。
1930~60年のスウェット・Tシャツというのはスポーツウェアでユニホームだった。

それを着て激しくスポーツをしていたと考えると汗や泥で繊維が濡れ、水分を含む。
そして、体の熱や太陽光の熱で酸素が反応して加水分解が促進する。
さらにその後、洗濯槽に入れる事でさらに酸素に触れ加水分解が促進。

という繰り返しで色が落ちるという原理じゃないか?という仮説が立った。

ならばどうするか・・・。

長い年月をかけて出来上がる工程を再現すべくまず考えられた策が、ありとあらゆる実験を可能とする加工釜の作成だ。

ワッシャー(業務用洗濯機)をベースに内側のアルミの厚さを調整、コンピューター制御を取り入れ、釜の回転が止まるタイミングで内容物が落ちる角度を調整できるような代物を作り上げた。

この改造釜は内部を真空状態に近づけることも可能であり、ありとあらゆる薬剤での反応実験が可能となった。
もはや化学の世界に足を突っ込んでしまっている。

そして数十回にも及ぶテストにより、染料が導き出されることとなる。
1960年代までの白く褪色する色を再現するには、現代の三原色の反応染料では不可能だ。
当時と同クオリティの硫化染料もしくは三原色でも染足の弱い直接染料が必要だった。

またフィックス剤も現代のカチオン系では強すぎる、アミノ酸を利用したものが良い。
だが、アメリカにも日本にも条件を満たすものが見つからない。
ならば作るしかないだろうと。

京都にある大正時代から続く染料のスペシャリストに依頼し、度重なる実験の末、
見つかった一つの効果的なアミノ酸を混ぜ、作成された専用の直接染料により、染め上げられたボディがベースとなっているのだ。

次に褪色を進行させるための策が考えられた。
こちらに関しても幾度となく実験が繰り返されることとなる。
先にも触れた改造釜を使い、釜の中を真空状態に近づけ、固形水素や過酸化水素等、多種多様な薬剤を注入して反応を見る。

その結果導き出されたのが、色を落とす初期段階でセルラーゼ酵素を30秒使い、反応の初期段階の下地を作る。

過酸化水素を水に加えることで槽の中で酸素が余り、さらに熱を加えることで、染料(色止め剤のアミノ酸)の酸化を促進して加水分解が起きる。
温度を上昇させることで酸化を促進し、時間の経過の代わりにしていくのだ。

直接的に作用する化学薬品は使わず、1色の加工に10〜16時間をかけて酸化の反応で加水分解を促進していく。

加工釜の中で50~60年という時の流れを10~16時間に縮めるのだ。
あたかも玉手箱を開けてしまった浦島太郎かのように。

こうして確立された手法により、厳格に管理された工程の中で、一点一点異なる表情をみせ、唯一無二の輝きを放つその様は、『スウェット』という枠組みを超えたネオ・ヴィンテージと呼ぶにふさわしいアイテムへと昇華する。

そんなREMI RELIEFのスペシャル加工スウェットにROCOCOは、あえてカラー別注をかけている。

それはなぜか。
古着では出会うことの難しいパーフェクトフィットであり、かつ希少種である色相を手にしてもらうためである。

KHAKI

まずは「カーキ」だ。
ROCOCOが最も得意とするカラー。
ミリタリーウェアを彷彿とさせるカラーリングは、加工によりその重みが抜け、土臭さと柔らかさが絶妙な位置で融合している。
イージーパンツからデニムなど、その相性の良さは目を見張るものがある。

BURGUNDY

そして、「バーガンディー」。
カレッジスウェットでよく見かけるものとは一味違う、もう一つ熟成の進んだワインのような色味から加工によって渋みを中和させていったかのような、まろみを感じさせるカラーリングとなっている。

NAVY

最後に、こちらは別注ではないが、人気の高い「ネイビー」。
スウェットとしては定番のカラーではあるが、淡く色褪せた紺に、ステッチの髄所にみられるアタリの陰影が秀逸。
長年着古し、思わずヴィンテージと見間違えてしまう程リアルだ。
買ってすぐに、この雰囲気を味わえるのは、REMIならでは。

長い年月をかけ、試行錯誤を繰り返しコツコツと積み上げられてきたREMI RELIEFの技術は消して色あせることなく、今後もわれわれに新たな驚きと可能性を示してくれることだろう。

『染められないものはない』という染色のマイスターは、次にどんな未来を見せてくれるのだろう。